建設業許可に関する基礎知識や要件、手続きに関する情報です。
ご不明点があれば、お気軽にお問い合わせください。
労働福祉の状況(W1)について
その他の審査項目(W)の1つである労働福祉の状況(W1)は、加点項目と減点項目があります。
従業員の退職後の生活の支えとなる退職金制度や、上乗せ労災の導入といった福利厚生の充実は加点評価され、加入義務があるにも関わらず社会保険に未加入だった場合は大幅な減点となります。
目次
- 雇用保険の未加入(減点項目)
- 健康保険の未加入(減点項目)
- 厚生年金保険の未加入(減点項目)
- 建設業退職金共済制度への加入(加点項目)
- 退職一時金もしくは企業年金制度の導入(加点項目)
- 法定外労働災害補償制度への加入(加点項目)
- W1の算出方法
-
雇用保険の未加入(減点項目)
雇用保険の加入義務があるにも関わらず未加入の場合は、減点されます。
雇用保険は、労働者(適用除外となる者を除く)を雇用している事業所は加入する必要があります。
※適用除外となるのは下記の者です。- 1週の労働時間20時間未満の者
- 65歳以上で新規雇用された者
- 31日以上継続雇用の予定がない者
- 昼間学生
- 同居の親族
- 家事使用人
なお、個人事業主のみの場合、法人の役員のみの場合も適用除外となります。
-
健康保険の未加入(減点項目)
健康保険の加入義務があるにも関わらず未加入の場合は、減点されます。
健康保険の加入義務があるのは、法人と5人以上を雇用する個人事業所です。なお、建設国保や全国土木建築国保等の国民健康保険組合に加入している場合は、健康保険(協会けんぽ)に別途入りなおす必要はありません。
-
厚生年金保険の未加入(減点項目)
厚生年金保険の加入義務があるにも関わらず未加入の場合は、減点されます。
厚生年金保険の加入義務があるのは、法人と5人以上を雇用する個人事業所です。 -
建設業退職金共済制度への加入(加点項目)
建設業退職金共済制度へ加入していると加点されます。
建設業退職金共済制度とは、建設現場で働く労働者や一人親方のために国が作った退職金制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部が運営しています。
略して建退協(けんたいきょう)と呼ばれています。労働者は、雇用主から勤務日数に応じて証紙を貰い、それを共済手帳に貼っていきます。
別の現場になり雇用主が変わっても、同じように勤務日数に応じて証紙を貰い共済手帳に貼っていき、証紙が一定数以上となったら、独立行政法人勤労者退職金共済機構から退職金が支払われます。1つの事業主の元で長期間にわたって働くわけではない現場の労働者が、現場が変わり雇用主が変わろうが、働いた日数分の掛け金に応じて退職金がもらえます。
-
退職一時金もしくは企業年金制度の導入(加点項目)
労働者の老後の生活保障のために、退職一時金もしくは企業年金制度を導入している場合に加点されます。
退職一時金は、退職時にまとまった金額を支給するものです。
企業年金は、年金形式で継続的に支給するものです。経営事項審査では下記が評価対象となります。
- 中小企業退職金共済事業本部(略称:中退共)と退職金共済契約を締結している。
- 特定退職金共済団体(商工会議所、商工会等)との間で退職金共済契約を締結している。
- 労働協約に退職手当の定めがある。
- 労働規則に退職手当の規則がある。
- 厚生年金基金が設立されている。
- 適格退職年金契約が締結されている。
- 確定給付企業年金が導入されている。
- 確定拠出型年金が導入されている。
-
法定外労働災害補償制度への加入(加点項目)
法定保険である政府労災は労働者にとって必要最低限のものでしかなく、カバーしきれない部分が出てくるため、万が一の事故に備えて従業員のために、法定外の上乗せ労災に加入することで評価される項目です。
また、建設業者は、労災訴訟(近年は高額化)に発展した場合の備えにもなります。経営事項審査では、下記と保険契約を締結している場合に加点評価されます。保険契約は下記の要件を満たす必要があります。
- 業務災害および通勤災害のどちらとも対象となっていること
- 直接の使用関係にある職員及び下請負人(数次の請負による場合にあっては下請負人全て)の直接の使用関係にある職員の全てが対象となっていること
- 死亡及び労働者災害補償保険の障害等級第1級から第7級までに係わる災害の全てが対象となっていること
なお、政府労災には当然加入している必要があります。
-
W1の算出方法
加点項目数と減点項目数に下記の数値を乗じて算出します。
W1=加点項目数×15-減点項目数×40
加入義務があるにも関わらず、雇用保険、健康保険、厚生年金保険、全て未加入だった場合、120点(3項目×40)もマイナスになってしまうため、法令遵守の観点からも必ず加入すべきです。
※W評点は下記の計算式によって算出します。
W=(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8+W9)×10×190÷200